中堅中小企業の潜在力を引き出す投資 後編
※掲載の対談インタビューはインタビュー当時の記事です。

中村 悟 氏
M&Aキャピタルパートナーズ株式会社
代表取締役社長

1995年積水ハウス入社。設計業務経験を活かし、資産家を対象とした相続対策、資産運用の営業業務まで幅広い案件を手掛ける。2005年10月、中堅・中小企業の後継者問題の解決と、発展的事業承継の実現のため、M&Aキャピタルパートナーズを設立、代表取締役社長に就任。13年11月に同社株式を東証マザーズ市場に上場。14年12月に東京証券取引所市場第一部に市場変更。

2005年の創業以来、一貫して中堅・中小企業の事業承継ニーズを持たれるオーナー経営者さまを中心としたM&Aのアドバイザリーサービスを提供。
2013年11月に東証マザーズ市場に上場。
2014年12月に東京証券取引所市場第一部に市場変更(証券コード:6080)

https://www.ma-cp.com

経営指南役としての金融投資家

中村:

事業会社とファンドの違いというと、一番の違いはファンドの投資には期限があるということですね。投資のために集めた資金を、基本的には投資で増やし、予め約束した期間内に投資家に戻さなければならない。それに比べると、御社は100%グループからの資金調達とのことで、買った会社をいついつまでにキャッシュ化しなければならないといった期限が課されていないという点が特徴的ですね。オーナー様としては、投資家本位で会社を売り買いするのではなく会社本位で意思決定ができるのかという点について、みなさんやはり気にされますので、響く話だと思います。

その他、買い手が事業会社の場合、同業が買うのか異業種が買うのかで分かれます。同業の場合、買い手は自分たちで経営して自分たちの社風に染められると思っていますので、もはや引き継ぎも最小限でよくて、どんどん自分たちのカラーを出していって、足し合わせてより収益性の高い会社にする、という分かりやすいシナリオですね。業界内の会社が別会社を買うやり方は非常に手堅いように思いますが、買われる方からすると、従来持ってきた自分たちの社風は消え行くことが多い。一方、異業種の場合は、業界外の人間が会社を買った日から全経営を担うパターンはほとんど見られず、どちらかというとまずは現経営陣に頼るという考え方になるんですが、これはファンドの考え方に近いのではないでしょうか。

オーナー様はどういう風に見ているかというと、ファンドという存在への抵抗が前よりも薄れているのではないかというのが率直な印象ですね。特に若い経営者こそ、ファンドと二人三脚で会社を大きくしていきましょうという提案が、しっくりくるようですね。

松原:

そうですね、2002年ぐらいからこのビジネスをやっていますが、当時の日本にはファンドというと性悪説というのがあったんですけど、今はかなり理解されて認知されてきているのかなと思いますね。おっしゃるように、特に40代から50代の経営者の方とお話ししていると、我々がどういうことをやっているのかということも分かってもらえているようです。

中村:

最終的にM&A成立とならないケースにおいても、その検討過程において金融投資家とかファンドの考え方、分析方法とか、とても勉強になったという方がかなり多いですね。つい直近でもあったんですけど、ギリギリまで検討して契約が決まりかけていたんですけど、親族内に反対株主がいたということと、息子が社長になる芽を摘んではいけないということで、最終的なお取引を中断したということがありましたが、その後に、オーナーの方に経営の考え方がものすごく勉強になったと言われました。

MACPから見るSCI

中村:

やはり銀行系であることの安心感が非常に強いなというところと、あと、先ほどのお話にもありましたが、投資の期限がないという点ですね。期限に縛られずに投資できるということが、オーナーにとっては安心感があると思います。
他にも、マジョリティのバイアウト投資だけということだけではなく、ベンチャー投資もされているからか、投資のご提案のラインナップが豊富ですよね。その幅広さがまた安心感を与えると思います。豊富なご提案内容の中では、一貫してオーナーおひとりおひとりのお気持ちを汲んでそれに合った提案をオーダーメードで作られるという姿勢をいつも感じています。

松原:

ありがとうございます。御社の営業担当者さん達と同様ですが、弊社のメンバー全員が、できるだけオーナー様の目線でいること、これが第一です。ご提案の際も、例えば実際にその会社さんが世の中に提供しているサービスをユーザーとして使ってみるとか、オーナー様が本当に考えていることを、机上ではなく、できるだけビジネスの現場を体験した上で提案することで、具体的な話をするようにしています。

提案のラインナップは、仰って頂いたように、バイアウト投資とベンチャー投資を二本柱にしているところが弊社の強みの一つです。どういうことかと申しますと、ベンチャーってやってみなければ分からないという要素が大きいですよね。一方、バイアウト投資というのは、傾向として、過去の数字を分析した上でそれをいかに伸ばしていくかということに重きが置かれがちですが、例えば経営者から「環境が変わり、それを機に新しいことをしたい」という事業に関する提案があったときに、新しい取り組みの是非に対する判断がつきにくいものもあって、株主としては「ちょっとそれは待ってください」となるケースが多いと思うんです。そんな中、我々にはベンチャー投資で新しく出てくるビジネスに対してもちょっとやってみようよという発想が根付いているので、バイアウト投資においても、この会社さんにとって新しいところで更に成長させてみたらどうだろう、という発展的な考え方にも違和感を持たない。特に、我々のように、既に現在成長している企業さんに投資をさせて頂いて、会社さんの更なる展開を提案・実行する案件の多い投資家としては、ベンチャー的な感覚は会社さんへの提案において非常に大切ですね。もちろん、我々としての投資の規律という、外せない要素もありますので、なんでもハイハイというわけではないんですが、距離感や考え方などが共有できることは大きなアドバンテージだと思います。

他にも、ベンチャーとバイアウトの各案件間で、シナジーを生むケースもあります。例えばですが、我々がベンチャーで投資している会社に、予約の管理台帳をクラウドで提供するサービスで日本ではトップの会社があります。そのベンチャー企業をバイアウト投資先の飲食業やサービス業の会社さんにご紹介して、予約の電話がふさがっていて予約を取れないロスを回避できるとか、電話を取らなくてよいので、従業員さんのシフトが効率よく回るとか、一つ一つは小さなことですが、双方の会社さんにとって良い結果となります。

特に昨今は、旧来型の事業を手掛ける会社さんにとっても、ネットをいかに利用するかというところが課題になっています。弊社のベンチャー投資先にはネット関連等の会社さんも多く、ネット業界についても学ばせて頂く日々です。投資先の会社さんに教えて頂きながら培ってきた土地勘を活かし、投資先の会社さんに提案できるというのは、バイアウトとベンチャーを両方手がけている強みの一つではないかと思います。

中村:

プロの金融投資家として、管理体制という側面から会社をご支援していくことはもちろんなのでしょうが、会社としての更なる成長には何が必要かという目線も持たれているということですね。我々からすると、管理体制が整備されている上に、今後の成長機会がある会社さんは、その後更にM&Aしていくことがあれば、買い手さんから見ても安心して買収できる会社さんになるかと思います。

MACPが社員に求めること

中村:

素質というかそういう部分では誠実さ、情熱、行動力、この辺は基本的に持ち合わせてほしいものですね。あとは、M&Aですと財務、法務、税務などの知識ですね、このあたりは専門家ではないので全部が分かるのは難しいと思いますが、M&Aまわりの感覚知を持てるぐらいの知識を持ってもらいたいと思います。そうでないとミスリードしてしまう可能性があります。ちょっとしたボタンの掛け違いが後から甚大なことにつながってしまう仕事なので、このあたりの慎重さとか、常に専門家と意見交換しながら適切に提案をまとめていける力などは持っていてほしいですね。

お客さまに対する誠実さという部分では、あくまで我々は選択肢のひとつなので、ご提案したことをオーナー様がやらないという可能性もあり、その時はやむなしなんですが、数年後にオーナー様が考え方を変えられることがありまして、MACPはあの時一生懸命に提案していろいろ資料を作ってくれたので、次回はお願いしたいということがあるので、案件の成否に関わらずお客さまには常に誠実に対応してもらいたいですね。

松原:

中村社長は、お客さまからのアポイントがものすごく入る方と伺っていますが、「誠実さ」が伝わっているのだろうと思います。MACPさんには若手の営業の方もいて、お客さまから可愛がられているのではないんでしょうか。

中村:

そうですね。そういう意味ですと、気持ちを持っているという事実だけでなく、どのように見えるかも大切です。社員の採用面接の時は、第一印象ですとか、言葉づかいとか、しぐさなどを結構よく見ますね。無駄なところで失点してしまわない、人間的に誠実そうだという印象なども、大事な要素の一つだと考えています。

MACPの今後について

中村:

弊社はまだ役職員数47名、コンサルタントとして稼働しているのは36名(※2015年10月1日現在)という規模なので、年間にお手伝いできる件数も上限が見えてしまいます。世の中のニーズが大きい割にはお手伝いできている業種も件数も限られたものになっているので、優秀な人間を増やして、より幅広い業種、より多くの件数に対応できるようにしていきたいです。あとは、クロスボーダーで海外の案件をできるようにしたいと考えています。これをやるには、まずは経験者を確保しなければなりません。その他、もう少し細かいところで、ウェブからの問い合わせ対応の充実や、金融機関との提携等、より伸ばしていきたいと考えています。

SCIが社員に求めること

松原:

会社さんが10年なり、20年なりをずっと汗をかいて収益を上げてきて、お客さまに感謝されて社会に存在し続けてきたというものに対するリスペクト(尊重)がないと、このビジネスはやるべきではないという想いがすごくあって、そこはチームメンバーに対してしつこく言っていますね。そこの視点がないと、どこかでボタンを掛け違えてしまう可能性があります。投資をした会社さんの社員集会等で創業家の方のお話などを伺うと、365日休まず仕事をしたなどという御苦労があって、そういう中で会社を大きくしていった方々に対するリスペクトがあるのかないのかによって、話し方も変わってくると思っています。
あとは、投資の規律を守ることです。我々はあくまでも投資のプロであり、投資家として守るべきことを愚直に手を抜かずにやっていかなければならない。そのような姿勢を常に意識してほしいといつもメンバーに言っています。

SCIの今後について

松原:

中堅中小企業の経営者の方から、M&Aを活用し更なる成長を模索したいが、M&Aに必要な経営人材や資金が不足している、というご相談をよく受けます。御社が活動する中で、そのようなニーズをお持ちで、どこかいいパートナーがないかなという方がいらっしゃれば是非お声掛けください。自社だけではなくて外部の異なるスキルやネットワークをお持ちの会社さんと共同で投資をしていきたいと考えています。外に学ぶということをグループの大きなスローガンにしておりますので、そういったところでも一緒にできればと思います。