國光 宏尚 氏
株式会社gumi
代表取締役社長

1974年 兵庫県生まれ。私立岡山高校を卒業後、中国、インドなどのアジア諸国、北米、中南米など約30 カ国を放浪。1996 年中国 復旦大学、2000 年米国Santa Monica College、2004 年 株式会社アットムービーに入社。同年に取締役に就任。映画・テレビドラマのプロデュース及び新規事業の立ち上げを担当。2007 年に株式会社gumi を創業し、代表取締役に就任。

モバイルオンラインゲームの企画・開発・運営。スマートフォン向けソーシャルゲームプロバイダとして、グローバルNo.1 の企業を目指しています。
2014年12月18日に東京証券取引所市場第一部上場(コード:3903)。

http://gu3.co.jp/

gumi venturesの投資戦略について

新生企業投資(以下SCIという)と株式会社gumiの100%子会社、株式会社gumi venturesは、2012年に設立したgumi ventures, L.P.(以下、1号ファンドという)に続いて、gumi ventures2号投資事業有限責任組合(以下、2号ファンドという)を2014年8月に設立、今般、ファンド総額20億円でファイナルクローズしました。これまで、gumi venturesの戦略について対外的にお伝えする機会がなかったので、SCIは國光さんと一緒にファンドを運営する立場ですが、國光さんにgumi venturesの戦略についてインタビューしたいと思います。

SCI:

まず、最初に國光さんのgumi venturesに対する思いについて教えてもらえますか?

國光:

これは非常にシンプルで日本にもっともっといろんなイノベーションを起こす必要があると考えています。当然、自分自身でもgumiを通してモバイルゲーム業界にイノベーションを起こしていくわけですが、それだけでは限界がある。それを超えてさらにいろいろな分野でイノベーションを起こしていくにはどうすればいいかと考えたときに、若手起業家の発掘と育成を行っていく必要があると思ったのがgumi ventures設立のきっかけです。

SCI:

2号ファンドはどのような先へ投資をしていくのですか?

國光:

スマートフォンというグローバルで共通のデバイスが普及したことによって、エンターテイメント分野で大きな変革が起こり、新しい市場が次々と生まれてくると思っています。モバイルゲーム市場はすでに立ち上がっているのですが、これから映像をはじめとして様々なサービスがスマートフォン上で展開されていくはずです。人々がこれまで、テレビを見たり、新聞や雑誌を読んだりしていた、いわゆる、「可処分時間」にスマートフォンを利用してコンテンツを楽しむ時間が増えていくことは間違いないと思っていて、そういったサービスや広告などの周辺領域の企業に投資を行っていきたいと思っています。

SCI:

どのようなステージのベンチャーが投資対象になりますか?

國光:

投資ステージに関しては特にこだわらず、シードステージからレイターまで幅広くターゲットにしようと思いますが、単に2号ファンドからお金がほしいだけという先ではなく、2号ファンドが株主になることによって投資先の海外展開が加速するとか、gumi venturesが投資先に何か価値を提供できる先に投資がしたいですね。
また、投資先には全面的に支援していきたいので、基本的にはそのラウンドでのリードインベスターとしての投資にこだわっていきたいと思います。

SCI:

2号ファンドにおける國光さんの関わり方について教えてください。

國光:

2号ファンドの投資候補先は僕自身がすべて面談しています。その上で事業内容や市場のポジショニング、経営者などをみて、これはと思った投資候補先は、SCIと一緒にデューディリジェンスを行って投資判断をするという流れです。また、投資先とは定期的にミーティングを実施し、僕自身がこれまでのgumiの経営を通じて得た経験からアドバイスを行うなどのメンタリングを行い、全面的に応援するようにしています。

SCI:

メンタリングは具体的にどのようなものですか?

國光:

創業者あるいは起業家が直面するような様々な課題として、資金調達の方法、ビジネスモデルや事業戦略の作り方、人材採用、メディア露出のやり方、成長ステージにあった組織の作り方などがありますが、これらのことをgumiでの経営で一通り経験しています。こういった課題に対してメンターとしてベンチャーの成長のための適切なアドバイスを行っていくことができると思っています。

SCI:

投資先に対してメンタリングに加えて、どのようなサポートを行いますか?

國光:

1号ファンドの投資先にはgumi本社内にオフィスを構えてハンズオン支援している先もありますし、有形無形のバリューアド(価値の付加)が可能だと思います。
具体的には、国内での組織作りやどのように成長させていくかという初期のフェーズに加えて、国内の事業が軌道に乗った後のグローバル展開もサポートできることが特長ですね。
gumiはアジア、ヨーロッパ、米国とグローバルに海外展開をしてきたので、投資先が海外に出たいときにどの国にどうやって進出したらいいかのアドバイスやgumiの各拠点から現地企業の紹介などのサポートが可能です。

SCI:

どのようなベンチャーに魅力を感じますか?

國光:

起業の成否は誰がやるかが一番重要という議論がありますが、個人的にはそれよりもどの市場で勝負するかが最も重要だと思っています。比較的短い時間軸で高い成長が見込める分野に挑戦するベンチャーに魅力を感じます。スマートフォン、タブレットのような新しいデバイスが出てきたことによって、新しいメディアやエンターテイメントが勃興してくるはずで、そういった市場にベンチャーがどんどんチャレンジしていってほしいと思っています。2号ファンドではなく、その次のファンドのターゲットになるかもしれませんが、テレビがインターネットにつながる時代も絶対やってくると考えているので、スマートテレビ関連の分野にも注目しています。

SCI:

どのような起業家に投資をしたいと感じますか?

國光:

何か一つ飛び抜けた点がある起業家ですね。
業界に精通した知識や事業にかける情熱、夢を実現するための技術やコンテンツを生みだすクリエイティビティ、人のネットワーク、全部そろっていることがベストですが、当然一人で全部持っている人はめったにいないので、少なくともどれか一つは持っていることが重要だと思います。飛び抜けた点が一つあれば、それ以外の足りないところは、人材を探してきてチームアップすればいいと考えています。
例えばテレビ局にいて映像を作るのが圧倒的にうまいけど、このままじゃダメだから新しい挑戦がしたいという人がいれば、ネットまわりのことは誰か探してこようということになる。どれか一つでも飛びぬけた点を持っている人がいれば、とりあえず、連絡をもらえればと思います。

SCI:

2号ファンドの設立に合わせてスタートする予定のインキュベーションプログラムはどんなものになりそうですか?

國光:

僕自身は、ベンチャーを作って挑戦すれば絶対に成功するだろうという分野をいくつかイメージとして持っているのですが、なかなかそういった分野をやっている日本の起業家に出会いません。インキュベーションプログラムをスタートさせて、多くの起業家とビジネスプランについて議論することで成功するベンチャーを数多く生み出していけると思っています。プログラムの詳細は、近々、発表しますが、私の親しい起業家仲間にも声をかけて、gumi venturesならではのインキュベーションプログラムにしたいと思っているので期待してください。

SCI:

ありがとうございました。